おいも研究室

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読書『フィンランド式キッズスキル入門/佐俣友佳子』

夕飯をダラダラ食べる。わかっている筈なのにトイレでうんちをしない。些細な事でギャン泣きして怒る。しかし、どれだけ「~しなさい」とか「~しちゃダメだ」と注意しても、全く聞く耳を持たない娘に苛立ちがつのる。このままではいけないとは思っているが、どうしたらいいかわからない…

――思い悩んでいた時に「叱らない子育て」というフィンランド式子育てを謳う、本書が目に止まった。一体、叱らずに子どもの問題を解決するにはどうしたらいいのだろうか。

「キッズスキル」とは何か

著者は、キッズスキルの基本概念について以下の通り述べている。

子どもの問題行動は、まだスキルを学んでいなかったり身につけていないために起こるのであり、そのスキルを学べば、問題は解決・解消できる

キッズスキルでは、例えば「部屋を散らかす」という問題を「お片づけのスキルを学ぶ」というように、スキルを学ぶことに変換して考える。それでは、スキル習得は一体どのように行われていくのか。

スキル習得の流れ

本書ではスキル習得に至るまでの段階として「15のステップ」が挙げられている。ここでは、その中でも自分が使えそうだと思ったステップを抜粋して考察していく。

  • 1.問題をスキルに変換する
  • 3.スキルを学ぶことの利点を探る
  • 8.スキルを学べたらお祝い会を開く

第一のステップとして、問題を認知させ、それを解決するスキルを習得することの必要性を理解させる。自分の経験からしても、他人に何を言われようが、自分から変わろうと思わない限り変わることができない。そのため、まずは子ども自身にスキルを学ぶこと(何を学ぶのか、なぜ学ぶのか、学んだらどんないい事があるのか)について、しっかりとイメージを持ってもらうことを第一とする。そして、スキルを学ぶことができたら、しっかりとリワードを与える。成功体験の実感は、達成感を味わうとともに、次のスキル獲得へのモチベーションに繋がる。

  • 4.スキルに名前をつける
  • 5.味方になってくれるヒーローを選ぶ

次に、獲得しようとするスキルに名前をつける。そして、味方になってくれるヒーローを設定し、そのヒーローが活躍する物語を子ども自身に作ってもらう。自分で具体的な物語を作ると、成功への道筋を具体的にイメージすることができ、その物語に沿い、ゴールに向かって行動することができるようになる。

  • 6.サポーターを募る

頭の中のヒーローだけでなく、実在する人からの協力も大切である。ここからは私見だが、子どもが達成することがどうしても難しいことは、一旦は大人が手を貸して、簡単に、シンプルにしてあげることも重要なのではないかと思う。例えばうちの娘は、食事中に色々なことに気が散って、集中してご飯を食べることができなかった。この原因の一部としては、テーブルの上が散らかっていたことや、自分が腹八分目と感じられる以上の量のご飯が盛り付けられていたことが考えられる。そこで、大人がテーブルを片付け食事以外の物を乗せないようにしたり、ご飯の盛りを控えめにした(足りない時はおかわりをすればいい)ら、集中して食べられるようになった。問題の原因の推測は責めるためではなく、解決方法を見つけ、サポートをするために行うべきである。

  • 14.スキルを他の人に伝える

まだ3歳半の娘には難しいかもしれないが、獲得したスキルを他の人に伝える・教えると、学びが深まるであろう。

以上について共通して言えることは、子ども自身に積極的に意見を出してもらうということである。子ども自身に問題点と解決策を考えさせ、自発性・自主性・想像力を駆使すれば、問題は大人が叱りつけるものから、子どもが自ら解決できるものへと変化する。そう考えると、子どもに問題を伝える時は「~をするな」と、ネガティブ・パッシブな声がけをするのではなく、「~しよう(してみよう)」とポジティブに声がけをすることが大切なのではないかと思った。

今後役に立ちそうな具体的なスキル

最後に、本書で紹介されていたケーススタディの中から、興味深かったものについて列挙する。

  • 感情が分からない時、顔の絵を見せて選ばせる
  • お箸マスター
  • 苛立った時のタイムアウト(1人1日1回まで)
  • 21時イートストップ

前者二つは、これから下の子にも利用できる。また後者二つは、自分も学ぶべきスキルである。

まとめ

子どもを叱りつけても、その場を凌いだり、親の気持ちを晴らすことはできたとしても、問題の根本的な解決には繋がらない。そして、子どもが自ら成長できる機会を失うことになる。自主性を活かし、楽しく遊びとしてスキルを身につけるよう上手く促すことができれば、子どもは勝手に多方面に向かい成長していくであろう。

読書『ストーリーとしての競争戦略/楠木建』

戦略に関する本を読むと、戦略的思考のための様々な分析手法(ツール)が紹介されている事が多い。それ自体は魅力的に見えるが、実際に現場で適用しようとすると「それでどうすればいいのか?」となってしまう。本書は、そのような長年の自分の疑問に答える本である。 「競争戦略は、論理的に筋が通ったストーリーであることが重要である」というのが、この本を通しての筆者の主張である。では、ストーリーとしての経営戦略とは、一体何なのか。

論理的なストーリー

著者は、経営戦略は論理が大切だと述べる。論理とは何かと言うと、コンセプトから競争優位に至るまでの話の繋がりである。「この手を打つと、こうなるから、こう利益が出る」というストーリーが、論理的に矛盾せず、一貫して繋がっていれば、その流れは実現できるし、実現した時に思い描いていた筋書きを描く。逆に、これがイメージできていないと、まず成功にたどり着くことはできない。では、どうしたら論理的なストーリーを作ることができるのか?

エンディングから考える

著者は、論理的なストーリーを紡ぐためには、エンディングから逆算して考えるのがいいと述べている。当たり前だが、目的地が見えていないと、そこにたどり着くことはできない。エンディングを規定するにあたっては、本当のところ「誰に」「何を」「なぜ」売るのかを考えることが大切であると言う。「なぜ、その顧客がその商品なりサービスに食いつくのか?」「なぜ、お金を払うのか?」「なぜ、喜ぶのか?」「なぜ、喜びが持続するのか?」(注1)……これらを起点として、最終的に顧客の喜ぶ姿がありありとイメージできなければいけない。著者は、戦略ストーリーにとって切実なものは「自分以外の誰かのためになる」ということであると述べる(課題1)。これは、次に論じる「ストーリーの面白さ」に繋がってくる。

ストーリーの面白さ

ストーリーは面白いものであるべきである。面白くないストーリーになんか、誰も参加したくない。ストーリーが面白くて、共感し、興奮して、初めて人は自発的に動く。ゴールも魅力的なものであるべきだ。皆が幸せを感じられるようになる目的地であれば、そこに至るまでの道がどんなに険しいものであろうとも、途中で挫折せずに目指すことができる。まずは、自分自身が面白くて仕方がないーーこれが絶対の条件だという。著者は、戦略を描くことはサイエンスよりもアートに近いと述べている。明るい未来を想像し、そこに至るまでのストーリーを紡ぎ、実際に笑顔の増える未来を創り出すのは、社会への貢献につながる。

まとめ

ベストプラクティスを知っていても、フレームワークに関する知識があったとしても、ただそれを単純に適用して、成功を築き上げることはできない(課題2)。自分が理想を追い求める中で、現実に直面している問題に対して、途中で諦めず、粘り強く、納得のいくまで最善策を真摯に考えることにより、本当のゴールにたどり着くことができるといえる。

注釈

(注1)他社との違いが無いと、顧客は選んでくれない。

(課題1)戦略ストーリーにとって切実なものは「自分以外の誰かのためになる」ということ。では、自分で考えるとどうなるか?

(課題2)戦略思考を豊かにするためには、過去に生まれたストーリーを数多く読み、背後にある論理を読解すること(抽象化)が有効であると述べている。